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出力段を三極管接続として整備・調整・測定した完動品です。詳細なスペックはネット上で見ることができますので省略します。外観上は前面フロントパネル、後面端子パネル、周囲ボンネットともに殆ど傷は無く、経年を考えれば極めて美品の品と言えます。アンプ内部のトランス類も錆、傷なく美品です。真空管アンプですがモダンな印象のアンプです。ボンネットは開放度が高く、真空管が発する熱を効率良く放熱する理想的なものとなっています。
Luxkit A1033は6CA7(EL34)の結線方式を組立時に、ウルトラリニア方式と三極管方式の何れか一方を選ぶことができるキット製品です。完成版としてはLuxからLX33として販売されておりました。ウルトラリニア接続時の最大出力が30W+30Wであるのに対して三極管接続時が15W+15Wと半減することは、三極管接続が音が良いとは言われていても、製品としてのスペック的にはアピール度に欠けることになり、製品版のLX33が高出力のウルトラリニア接続を採用した一つの理由かも知れません。同社の製品構成として、30W+30W機のSQ-38FD辺りとの並びからも30W+30Wが引き出せる6CA7のウルトラリニア接続が、本機の製品版LX33には採用されたような気がします。
キット版の本機では、ウルトラリニア接続とすればLX33と同じになってしまうため、敢えて三極管接続として整備・調整しました。UL接続と三極管の接続は、一部部品の交換が必要ですが後からでも比較的に簡単に可能です(後に記しますように、後日変更を引き受けることもできます)。
A1033のメーカ発表の回路図に基づき忠実に整備しましたが、下記2点は変更しました。回路図上に現れるような改造ではありません。
(1) このアンプには電源スイッチ、セレクター、テープモニター1,2の操作に伴って点灯するランプ(豆フィラメントランプ)が全6個用いられておりますが、これらを全て元の発光色に近い発光ダイオード(LED)に変更しました。元のランプは直流約12Vで点灯するようになっていますが、直流で点灯させるとランプの寿命が(交流点火に比べて)短くなり、この機種では結構多くのランプ切れを見てきました。勿論、ランプが切れても音には全く影響ありませんが、点くべきランプが点かないと故障感が強く心が折れてしまいます。
本機では、電源ランプは比較的明るくした電球色LED1個、セレクターは緑色LED3個,テープモニターはオレンジ色LED2個を用いました。セレクターとテープモニターは控え目の光量としました。元々直流電源は有りましたので、各色用の電流制限用抵抗3個を追加しました。平滑用コンデンサ1個は小さい容量の物に交換しました。元の容量では電源を切っても暫くLEDが消えません。トランスのランプ用専用巻線のシャーシ裏内蔵ヒューズの容量を0.3Aから0.2Aにしました。LED化したことにより今後ランプ切れの心配は無くなりました。
(2) これは回路変更ではありませんが、各出力管の対接地カソード電圧を測る4つのポイントをシャーシ上面まで放熱穴を利用して、上面に設けたラグ板まで引き出しました。こうすることにより、調整時にシャーシ底板を外すことなく、上面ボンネットを外すだけで、プリント基板上面に設けられたバイアス調節用半固定抵抗とDCバランス調整用半固定抵抗とを、効率良く調節することができるようになりました。少なくとも2個(写真の通り好ましくは4個)のテスターでバイアス電圧調整とDCバランス調整ができます。テストポイントと半固定抵抗器が同一面に有ると無いとでは、その調整時の作業性は大違いです。
本機には、片チャンネルに3個所(バイアス電圧調節用、DCバランス調整用、ACバランス調整用の半固定抵抗器)の調整箇所、したがって全体では6個所の調整箇所があります。ACバランスは発振器の信号を入力して歪率を測ることにより最適ポイントを容易に調整できます。この調整をきちんと行うことにより、主に偶数次の歪が減るのですが、全高調波歪率は大幅に減ります。偶数次なので奇数次の歪より耳障りではないと言われますが、ACバランスの調整をやって歪率計の数値が下がって最小値に行くのを見ると、やっと完成したと言う気分になります。
上記の調整を終えた本機の実測データを一部以下に記します。パワーアンプ単独でのデータとして、左chの最大出力は8Ω負荷で16.5W(波形のクリッピング時)、右chは16.2Wでした。両ch同時は測りませんでしたが、問題なく定格の15+15はクリアしていると思います。全高調波歪率は1kHzで、左chが0.045%(1W時)、0.09%(3W時)、右chが0.038%(1W時)、0.08%(3W時)と極めて優秀です。残留ノイズは、パワー段の入力端子をショートピンで短絡した状態で、左chが0.42mV、右chが0.38mVと優秀です。
プリアンプを単独での高調波歪率も測定しました。プリアンプ出力(PRE OUT)に100kΩの負荷抵抗を繋ぎ、AUX端子への1kHz入力で測定したところ、左右共に0.032%(1V出力時)でした。全く問題ない値です。
PHONO回路のRIAA特性(偏差も含めて)は測りませんでしたが、左右両ch同時に20Hz~20kHzの信号を連続的に変化させて加えたところ、プリアンプ出力に繋いだ電圧計の指針は、1kHz を中心にほぼ同じ増減の動きをしましたので、問題なく動作していると判断しました。
以上の調整・測定を終えた本機を5時間程鳴らしてみましたが、全く問題なく鳴りました。澄んだきれいな音でした。ボリューム、バランス、その他のプッシュスイッチも正常に操作しています。ハム音もなく、ガリノイズも無いアンプに仕上がっております。
本機のように大型のアンプになると、出力管(6CA7)の良否が性能にも大きく影響しますが、本機に付いている6CA7(松下製)は、多数の中からペアとして選別した物を2組使用しており、ですが新品に対して遜色ない物です。ペア取りは、写真に示す、A、B、C電源共に定電圧電源から供給され、2本同時に測定することができる自作の真空管試験器で行いました。実動作に近い状態で測定したもので、ペア内の電流差は4mA以内に揃っております。本機での実装後の4本の電流差は、DCバランスにて調整後1~2mA以内に調整しました。もともとペアチューブとして選別した物ですので、DCバランスはほぼセンターに近い位置です。
真空管アンプでは、カップリングコンデンサの劣化・故障による直流リークは出力管に短時間で致命傷を与えるため、本機では、出力段のカップリングコンデンサ4個は予防的な目的からも新品に交換しました。
使用に伴い将来故障、不具合が生じた場合には、メインテナンス、修理をお引き受けできます。また、真空管(終段の6CA7、ドライバー管12AU7)を交換した時のバイアス、バランスの再調整もお引き受けできます。さらに、改造(現在の三極管接続→UL接続への変更を含む)も事前にご連絡頂きご相談の上お引き受けします。
附属品は特にありませんが、全回路図はお付けします。また、PHONO入力を使わない時に入力をショートするためのRCAショートピンをPHONO入力端子に挿した状態で2本お付けします。レコードプレーヤーを使う場合には抜いてください。
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